ヘリコバクター・ピロリ感染症
ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)とは?
ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)とは、胃の粘膜に生息する細菌で、消化器系の多くの疾患の原因として知られています。ピロリ菌は、胃酸という強い酸性環境でも生き延びることができるという特徴を持ち、胃の内壁に長期間定着します。そのため、胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんといった病気を引き起こすことがあります。
ピロリ菌は主に口から胃に侵入し、胃の内壁に付着します。感染のメカニズムや治療法が明確にされるようになり、現在では多くの疾患の予防や治療が可能となっています。
ピロリ菌が引き起こす病気とは?
ピロリ菌は、胃や十二指腸に関わるいくつかの病気の原因となります。その主なものを以下に紹介します。
1. 胃炎(急性・慢性胃炎)
ピロリ菌が胃の粘膜に定着すると、胃の内壁に炎症を引き起こします。この炎症が急性であれば急性胃炎、長期間続くと慢性胃炎となります。慢性胃炎は、胃酸が胃壁を傷つける原因となり、長期間続くと胃の粘膜が薄くなり、さらに他の病気を引き起こす可能性があります。炎症のため、胃の痛みや不快感、食後の膨満感などが生じます。
2. 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
ピロリ菌が胃や十二指腸の粘膜にダメージを与えることにより、潰瘍(傷)を引き起こします。潰瘍は、胃壁や十二指腸壁が傷つき、そこに穴が開く状態を指します。これにより、腹痛、吐き気、さらには出血が起こることがあります。潰瘍が重症化すると、命に関わる危険もあるため、早期の診断と治療が重要です。
3. 胃がん(特に胃腺がん)
ピロリ菌の感染が長期間続くことで、胃の内壁に慢性の炎症が生じ、その結果、胃がんが発生するリスクが高まります。ピロリ菌が引き起こす炎症により、胃の粘膜が傷つき、その傷が修復される過程で異常な細胞分裂が起こり、最終的にがん化することがあります。胃がんの発症リスクを減らすためには、ピロリ菌の除菌が効果的であることが分かっています。
4. 胃MALTリンパ腫
胃MALTリンパ腫は、胃のリンパ組織で発生するまれながんですが、ピロリ菌感染が引き起こすことがあります。MALTリンパ腫は、胃の免疫細胞に異常が生じることで発生し、ピロリ菌が関与することが多いです。この場合、ピロリ菌を除菌することで、腫瘍の縮小や症状の改善が見られることがあります。
5. 機能性ディスペプシア
ピロリ菌の感染は機能性ディスペプシアの一部と関係していることがあります。機能性ディスペプシアとは、胃カメラで異常がなくとも、食後の膨満感や吐き気、胃もたれ、みぞおちの痛みなどの消化器症状がある場合に診断される疾患です。胃の働きが低下し、消化不良を引き起こすことがあります。機能性ディスペプシアの原因がピロリ菌である場合、除菌治療によって症状が改善することがあります。
ピロリ菌が引き起こす症状とは?
ピロリ菌に感染した場合、すぐに症状が現れることは少なく、感染しても自覚症状がないことが多いです。しかし、感染が進行して胃炎や胃潰瘍を引き起こすと、以下のような症状が現れることがあります。
1. 胃痛
ピロリ菌感染による胃炎や胃潰瘍の典型的な症状は胃痛です。痛みは、胃の上部に感じる鈍い痛みや鋭い痛みで、特に食後や空腹時に強く感じることがあります。痛みは持続的であったり、波のように現れたりすることがあります。
2. 吐き気や嘔吐
ピロリ菌によって引き起こされる胃の炎症や潰瘍は、吐き気や嘔吐を伴うことがあります。特に胃潰瘍が進行すると、食べ物を食べた後に吐き気を感じることがあります。
3. 食欲不振
胃の不快感や痛みが原因で食欲が低下することがあります。長期間にわたって食事量が減少すると、体重減少や栄養不足を引き起こす可能性があります。
4. 膨満感やガスの発生
消化不良が原因で、食後に膨満感やガスが発生することがあります。これはピロリ菌による胃の炎症が消化機能に影響を与えるためです。
5. 血便や黒色便
ピロリ菌による潰瘍が進行し、出血が起こることがあります。この場合、血便や黒色便(タール状便)を排出することがあります。これらは非常に深刻な症状であり、速やかに医師の診察を受ける必要があります。
ピロリ菌に感染する原因
ピロリ菌は、人間の胃内で生息し、慢性的な炎症を引き起こすことで胃粘膜にダメージを与え、最終的に胃がんのリスクを高めることがあります。感染後、ピロリ菌はしばしば無症状のまま存在し、長期間にわたって炎症を引き起こし続けることが多いです。
口からの感染(経口感染)
ピロリ菌は、汚染された水や食べ物を通じて口から胃に入ります。特に衛生状態が悪い地域や、食材や水が管理されていない場所での感染が多いとされています。
家族内感染
ピロリ菌は、同居している家族間での接触によって感染することがよくあります。食事や生活習慣を共にしていることが多いため、家庭内での感染リスクが高いです。
不衛生な生活環境
水や食物が清潔でない環境では、ピロリ菌が存在しやすく、その結果、感染のリスクが増加します。
ピロリ菌と胃がんの関係
ピロリ菌の感染は、胃がんの発生リスクを大きく高めることが知られています。ピロリ菌は、胃の内壁に炎症を引き起こし、慢性的な胃炎を引き起こします。この慢性炎症が続くと、胃粘膜に異常が生じ、最終的には細胞のがん化を引き起こすことがあります。
ピロリ菌感染による胃がんのリスクは、感染してから数十年にわたり、徐々に高まります。特に、胃の粘膜が萎縮し、腺体が異常に増殖することで、がんの発生リスクが増加します。ピロリ菌による慢性胃炎が続くと、胃粘膜の機能が低下し、胃がんを引き起こす条件が整います。
ピロリ菌の診断方法は?
ピロリ菌の感染を診断するためには、いくつかの方法があります。代表的な診断方法を以下に紹介します。
1. 呼気テスト(尿素呼気試験)
呼気テストは、最も簡便で信頼性の高い検査方法の一つです。この検査では、患者さまが尿素を含む薬剤を飲んだ後、呼気を採取します。ピロリ菌が感染している場合、尿素が分解されて二酸化炭素が発生し、これが呼気に含まれます。この二酸化炭素の量を測定することで、ピロリ菌感染を確認することができます。
2. 血液検査
血液検査では、ピロリ菌に対する抗体があるかどうかを調べます。感染が過去にあった場合でも抗体は残るため、現在の感染状況を把握するためには他の検査と併用する必要があります。
3. 便検査
便検査では、ピロリ菌の抗原を便から検出する方法です。特に、除菌治療後に再度感染がないかを確認するために使用されます。
4. 内視鏡検査と生検
内視鏡を使って胃の内部を直接観察し、胃の粘膜を確認する方法です。生検を行い、ピロリ菌の有無を確認することができます。この方法は、胃の状態が悪化している場合や、胃がんの可能性がある場合に行われます。
ピロリ菌の除菌方法
ピロリ菌の除菌治療は、通常、抗菌薬と胃酸抑制薬を組み合わせた治療法が行われます。
治療は通常7日間行われ、その後に再度検査を行って除菌が成功したかを確認します。再感染のリスクがあるため、治療後も継続的にフォローアップが必要です。
当院の胃カメラ検査の特徴
1.熟練の内視鏡専門医による胃カメラ検査
当院では経験豊富な内視鏡専門医が丁寧に胃カメラ検査を実施しています。細かい部分までしっかり確認し、安心安全に上部内視鏡検査を行います。
2.平日忙しい方でも実施可能な土曜日午前中の胃カメラ検査
平日に時間が取れない方のために、土曜日の午前中に胃カメラ検査を実施しています。お仕事がお忙しい方や主婦の方などでも受診しやすい体制を整えております。
3.オリンパス社製の高性能内視鏡システム「EVIS X1」導入
オリンパス社製の高性能内視鏡システム「EVIS X1」を導入しています。高精細な画像でより正確な診断が可能となり、胃がんなどの早期発見・早期治療に努めています。
4.鎮静剤を用いた眠ってできる胃カメラ検査
鎮静剤を使用して、リラックスした状態で胃カメラ検査を受けていただくことが可能です。眠っている間に胃カメラ検査が終わるため、痛みや不快感を感じず、ストレスなく受診できます。
5.実績豊富なベテラン医師による鼻からできる経鼻内視鏡検査
豊富な経験を持つ医師が、鼻から挿入する経鼻内視鏡で検査を行います。従来の経口内視鏡に比べ、喉の不快感が少なく、快適に上部内視鏡検査を受けていただくことができます。
6.完全個室のテレビ付き待機室・リカバリースペース完備
完全個室の待機室を完備し、プライバシーにも配慮しております。待機室にはテレビも完備しており、リラックスしてお待ちいただけます。また、内視鏡検査後はリカバリースペースにて、ゆっくりと回復していただくこともできます。
ピロリ菌に関するご相談
当院では、経験豊富な内視鏡専門医がピロリ菌の診断や除菌を実施しております。ピロリ菌は胃がんの原因となる菌であり、早期の発見や治療が必要不可欠です。些細な症状がある場合や、ご家族にピロリ菌感染したことがある方がいる場合、ピロリ菌除菌をしたことがある方なども可児市にある内視鏡・炎症性腸疾患センター 梶の木内科医院までお気軽にご相談ください。
- この記事の監修者
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内視鏡専門医 片野 敬仁KATANO TAKAHITO
所有資格
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医・指導医
- 日本消化器病学会 専門医・指導医
- 日本消化管学会 胃腸科専門医
- 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医